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酌井社労士事務所便り【2024年1月号】(2024/1/15)

目次


賃金改定率が過去最高に~厚生労働省実態調査から

◆賃上げ実施企業、引上げ額、引上げ率ともに昨年より増加

厚生労働省の令和5年「賃金引上げ等の実態に関する調査」結果によると、1人当たりの平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は89.1%(前年同比3.4ポイント増)、1人当たりの平均賃金の引上げ額は9,437円(同3,903円増)となりました。平均賃金の引上げ率は3.2%(同1.3ポイント増)で、平成11年以降で最も高い数値となりました。

同調査は、常用労働者100人以上を雇用する会社組織の民営企業を対象とし、3,620社を抽出して1,901社から有効回答を得たものです。

産業別にみると、平均賃金を引き上げた、または引き上げる企業の割合は、「建設業」が100.0%で最も高く、次いで「製造業」が97.7%、「電気・ガス・熱供給・水道業」が92.9%となっています。

平均賃金の引上げ額は、「鉱業、採石業、砂利採取業」が18,507円(引上げ率5.2%)で最も高く、次いで「情報通信業」が15,402円(同4.5%)、建設業12,752円(同3.8%)となっています。

 

◆すべての企業が業績好調による賃金引上げとは限らない

 賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素の割合をみると、「企業の業績」が36.0%で最も多く、次いで「労働力の確保・定着」が16.1%、「雇用の維持」が11.6%となっています。

本調査結果の通り、近年、賃金引上げを実施する企業が増加しています。その理由として、物価上昇への対応や従業員のモチベーション向上、人材確保・定着などが挙げられます。しかし、賃金引上げを実施するすべての企業が業績好調による引上げとは限らず、業績は改善しないが従業員の生活を守り、人材流出を防ぐことを狙いとして実施する企業も多いと考えられます。賃金引上げを実施する際には、政府が掲げている賃金引上げに向けた各種支援策等を参考にしながら慎重に検討する必要があるでしょう。

【厚生労働省「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」】

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/jittai/23/dl/10.pdf

介護離職、支援制度利用の現状と対策の必要性

◆介護離職に関するアンケート結果

東京商工リサーチが行った「介護離職に関するアンケート」の結果によると、2023年8月までの1年間に介護離職が発生した企業は10.1%あったそうです。離職してしまった従業員の属性は、正社員が65.3%を占めています。

一般的には、50歳代から親の介護を担う必要が高まる傾向にあります。つまり、働き盛りの中堅以上の従業員が、介護のために離職してしまう可能性が高まるということです。

 

◆制度の利用状況

一方、同調査では、介護休業または介護休暇の利用状況についての結果も示されています。介護離職した従業員の半数以上(54.5%)が、介護休業または介護休暇を利用していなかったことがわかりました。

仕事と介護の両立支援をマニュアルなどで明文化している企業は50.2%あったとのことですので、従業員への制度周知や会社による利用の働きかけの不足、従業員が周囲に遠慮してしまい休暇が取りにくいといった状況がうかがえます。

 

◆育児・介護休業法の改正予定

2024年の通常国会で、育児・介護休業法の改正が予定されています。

従業員への介護に関する情報提供や制度選択の意向確認の義務化などが検討されているほか、休業制度の利用を促すための研修や相談窓口の設置を求めることも議論されるようです。

 

「介護のことは従業員個人の問題」という意識だったり、介護に限らずそもそも休暇が取りにくかったりというのでは人を採用できる会社にはなれない、という時代になっているようです。今後の法改正の動向も見ながら、従業員の介護離職による損失を防ぐ方策をしっかりと考えていきたいですね。

【東京商工リサーチ「介護離職に関するアンケート」調査】

https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198090_1527.html

1月の税務と労務の手続[提出先・納付先]

10日

  源泉徴収税額(※)・住民税特別徴収税額の納付[郵便局または銀行]

※ただし、6ヶ月ごとの納付の特例を受けている場合には、令和5年7月から12月までの徴収分を122日までに納付

  雇用保険被保険者資格取得届の提出<前月以降に採用した労働者がいる場合>[公共職業安定所]

 

31日

  法定調書<源泉徴収票・報酬等支払調書・同合計表>の提出[税務署]

  給与支払報告書の提出<1月1日現在のもの>[市区町村]

  固定資産税の償却資産に関する申告[市区町村]

  個人の道府県民税・市町村民税の納付<第4期分>[郵便局または銀行]

  労働者死傷病報告の提出<休業4日未満、10月~12月分>[労働基準監督署]

  健保・厚年保険料の納付[郵便局または銀行]

  健康保険印紙受払等報告書の提出[年金事務所]

  労働保険料納付<延納第3期分>

  労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出[公共職業安定所]

  外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合)<雇入れ・離職の翌月末日>[公共職業安定所]

  固定資産税に係る住宅用地の申告[市区町村]

 

本年最初の給料の支払を受ける日の前日まで

  給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出[給与の支払者(所轄税務署)]

  本年分所得税源泉徴収簿の書換え[給与の支払者]


社会保険労務士 酌井敦史
酌井社会保険労務士事務所/合同会社メグリア代表
伊勢商工会議所にて企業の経営相談や労務管理に従事した後、2018年に社労士として独立開業。
得意分野である労働法務・給与計算業務を中心に、採用から退職までトータルに支援している。県外のお客様にはオンラインでの対応も精力的に行っており、地域No.1の人事労務の総合商社を目指す。

給与計算のアウトソーシング、助成金の申請・ご相談なら、酌井社会保険労務士事務所にお任せください。
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