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酌井社労士事務所便り【2026年3月号】(2026/3/2)

直近の制度改正・行政動向は、外国人雇用M&A(事業譲渡)、そして毎月の税務・労務手続に直結します。 今回は、実務で押さえておきたい3つのトピックを要点整理し、3月の提出・納付スケジュールもあわせてまとめます。

目次

特定技能・育成就労の分野別運用方針が閣議決定されました

政府は、令和9年4月からの特定技能および育成就労制度に関し、 「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針及び特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(以下、「分野別運用方針」)を 1月23日に閣議決定しました。

今回の決定は、受入れ分野の整理や受入れ見込数、日本語能力の水準、転籍(転職)ルールなど、 企業の受入れ実務に影響しうる要素を含みます。ポイントを順に確認しておきましょう。

対象分野と受入れ見込数

対象分野は、特定産業19分野育成就労産業17分野で構成され、 リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が新たに追加されます(自動車運送業・航空は特定産業のみ)。

これらは人手不足が特に深刻として、分野ごとに受入れ見込数(上限として運用)が示されました。 全体の受入れ見込数は、特定技能80万5,700人、育成就労42万6,200人の合計123万1,900人(令和11年3月末まで)です。

日本語能力の水準

日本語能力の目安は、育成就労開始時は日本語A1相当(または同等の講習受講)とされ、 その後、段階的に水準が引き上げられます。

具体的には、1年経過時はA1相当以上、本人意向による転籍時はA2.1相当以上、育成就労終了(特定技能1号相当)時はA2.2相当以上、 特定技能2号ではB1相当以上が目安です。分野によって上乗せもあり、例えば自動車運送業(バス・タクシー)では原則B1を求める一方、 日本語サポーターの同乗など一定の条件を満たすとA2.2まで引下げ可能とされています。

転籍と上乗せ基準

育成就労制度では、本人意向による転籍が認められています。 ただし当面は、分野ごとに1~2年の転籍制限期間が設定される点に注意が必要です。

また制度の適正性を確保するため、特定の分野では「上乗せ基準」(事業者の範囲の限定(許認可等)などの追加要件)が設けられています。 なお、運用要領は追って公開される予定です。最新資料は下記のページから確認できます。

【参考】育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領(出入国在留管理庁)
https://www.moj.go.jp/isa/03_00169.html

事業の譲渡を行う際に会社等が守るべきルールが変わりました

金融機関による事業性融資への取組みを促す施策の1つとして、 企業価値担保権の創設等を内容とする「事業性融資の推進等に関する法律」が令和6年6月に成立し、令和8年5月25日に施行されます。

これを受け、企業価値担保権の活用がなされた場合も必要な労働者保護が図られるよう、 「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」が改正されました。 M&Aや事業再編に関わる場面では、労務面の対応が後手に回るとトラブルになりやすいため、早めの整理が重要です。

企業価値担保権とは

企業価値担保権は、不動産担保や経営者保証に過度に依存しない、事業の将来性に基づく融資を後押しする制度です。 事業全体の価値が担保価値となり、技術力や今後の事業展開の可能性などが評価されます。

原則として、担保となっている事業を売却するときは「事業譲渡」の方法が用いられます。 他の担保制度と比べて、手厚い労働者保護が図られる点が特徴とされています。

指針の改正ポイント

改正では、企業価値担保権の設定時から実行時、そして事業譲渡の実行時に至るまで、 関係者(会社・管財人等)が留意すべき事項が整理されています。

実務上は、次の3点を押さえると理解しやすいです。

  • 企業価値担保権の設定時:会社は、労働組合等に対して経営課題等に関する意見交換や情報提供に取り組むことが望ましいとされています。
  • 企業価値担保権の実行時:管財人は、労働組合等に対し、労働者の権利(賃金債権、団体交渉権等)の行使に必要な情報提供に努めることや、事業譲渡による雇用や労働条件の影響について話し合うこととされています。
  • 事業譲渡の実行時:労働債権(賃金・退職金)について、優先的に支払うこととされています。労働契約の承継については、個々の労働者から承諾を得ることが必要です。

改正内容の詳細やリーフレットは、厚生労働省の資料が分かりやすいので、関係部門(総務・人事・法務)で共有しておくと安心です。

【参考】厚生労働省HP「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」の一部改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/saihen/68297_00001.html

【参考】リーフレット(事業主、管財人等 関係者の皆さまへ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001634911.pdf

【参考】リーフレット(働く方々へ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001634915.pdf

3月の税務と労務の手続(提出先・納付先)

月初・月中・月末は、税務と社会保険・労働保険の手続が集中しやすい時期です。 特に3月は確定申告関係の期限も重なるため、社内の締切管理を早めに整えておくことをおすすめします。

以下は、代表的な提出・納付の一覧です。実際には事業所の状況(採用の有無、雇用保険の加入状況、個人事業の有無等)により該当が変わるため、 「自社に関係があるもの」をチェックして運用してください。

提出・納付スケジュール

期限日は原則として下記のとおりです。直前で慌てないよう、前倒しで準備できるものから着手しましょう。

なお、提出先・納付先が複数に分かれるため、担当者が複数いる場合は「誰が・いつまでに・どこへ」をタスク化して共有するとミスを減らせます。

期限 内容 提出先・納付先
10日 源泉徴収税額・住民税特別徴収税額の納付
雇用保険被保険者資格取得届の提出(前月以降に採用した労働者がいる場合)
郵便局または銀行
公共職業安定所
16日 個人の青色申告承認申請書の提出(新規適用のもの)
個人の道府県民税および市町村民税の申告
個人事業税の申告
個人事業所税の申告
贈与税の申告期限(昨年度分)
所得税の確定申告期限
確定申告税額の延納の届出書の提出
財産債務調書、国外財産調書の提出
総収入金額報告書の提出
税務署
市区町村
都・市
31日 健保・厚年保険料の納付
健康保険印紙受払等報告書の提出
労働保険印紙保険料納付・納付計器使用状況報告書の提出
外国人雇用状況の届出(雇用保険の被保険者でない場合:雇入れ・離職の翌月末日)
個人事業者の消費税の確定申告期限
郵便局または銀行
年金事務所
公共職業安定所
税務署

まとめ

今回は、(1) 特定技能・育成就労の分野別運用方針、(2) 事業譲渡等指針の改正、(3) 3月の税務・労務手続について整理しました。 制度改正は「決まった後に知る」よりも、「変わる前提で準備する」ほうが、実務の負担とリスクを減らせます。

外国人雇用の受入れ体制や、事業再編時の労働者保護・情報提供の進め方、そして月次の期限管理は、 いずれも社内の運用設計がカギになります。自社だけで整理が難しい場合は、早めに専門家へご相談ください。

酌井社会保険労務士事務所では、外国人雇用の体制整備から、事業再編時の労務整理、各種手続の運用改善まで、 事業者さまの状況に合わせてサポートしています。気になる点があれば、お気軽にご相談ください。


社会保険労務士 酌井敦史

酌井社会保険労務士事務所/合同会社メグリア 代表

伊勢商工会議所にて企業の経営相談や労務管理に従事した後、2018年に社労士として独立開業。

労働法務・給与計算を中心に、採用から退職までトータルに支援。 県外企業にはオンラインで柔軟に対応し、地域No.1の人事労務の総合商社を目指しています。

労務管理や各種手続きに関するご相談は、酌井社労士事務所にお任せください!

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