療養・育児・介護で報酬が減ったときの新しい特例|社会保険料を翌月から下げられます
2027年(令和9年)1月1日から、療養や育児・介護のために勤務日数を減らした従業員の社会保険料を、これまでより早く下げられる特例が始まります。
結論
(要点)
2027年(令和9年)1月1日から、療養・育児・介護と仕事を両立するための就労調整で標準報酬月額が2等級以上下がった場合に、翌月から改定できる特例が始まります。
通常の随時改定では、報酬が減ったあとも3カ月間は減る前の高い保険料を負担します。その期間を短くできるのがこの特例です。
改定すると将来の年金額が減り、傷病手当金・出産手当金にも影響します。対象者に十分説明したうえで、あらかじめ書面で同意を得る必要があります。
「治療を続けながら働きたいので、勤務日数を減らしたい」。従業員からそう相談されたとき、会社が説明に困るのが社会保険料です。勤務日数を減らして給与が下がっても、保険料はすぐには下がりません。この待ち時間を短くする特例措置が、2027年(令和9年)1月1日から創設されます。使える場面と、使う前に必ず伝えなければならないことを整理します。
社会保険料は、標準報酬月額という区分をもとに計算されます。報酬が大きく変わったときに、この区分を見直す手続きが随時改定です。
問題は、そのタイミングです。通常の随時改定では、報酬が減ったあとも3カ月間は、報酬が減る前の高い保険料を負担し続けることになります。給与は先に下がるのに、保険料の負担はしばらく重いまま。療養や育児・介護のために勤務日数を減らした従業員にとっては、この3カ月が重くのしかかります。
そのため、報酬の減少が3カ月以上続くと見込まれる場合には、もっと速やかに標準報酬月額を改定できるようにしてほしい、という要望が出されていました。今回の特例措置は、それに応えるものです。
2027年(令和9年)1月1日から創設されるのは、次のような措置です。
療養、育児または介護と仕事を両立するため、勤務日数を減らすなどの就労調整を行い、その結果として標準報酬月額が2等級以上低下した場合に、翌月から標準報酬月額を改定できるようになります。
利用できるのは、報酬の減少が3カ月以上続くことが見込まれるとして、事業主から届出があった場合です。会社側から動かないと始まらない仕組みだ、という点は押さえておいてください。従業員が自分で申請すれば自動的に下がる、というものではありません。
手続きは事業主が行います。
被保険者報酬月額変更届(特例改定用)に申立書兼同意書を添えて、日本年金機構の事務センター、または年金事務所に提出します。組合管掌健保(会社などが設立した健康保険組合が運営する健康保険)に加入している場合は、同時に健保組合にも提出が必要です。
もう1つ、忘れやすい点があります。この特例で改定したあとも、定時決定は行う必要があるということです。定時決定とは、毎年1回、4月から6月の報酬をもとに標準報酬月額を決め直す手続きのこと。したがって、被保険者標準報酬月額算定基礎届の提出は引き続き必要になります。特例を使ったから算定基礎届は不要、と誤解しないでください。
ここがこの記事でいちばん大事な部分です。
この特例で標準報酬月額が下がると、本人にとって不利になる面が出てきます。将来受け取る年金の給付が減ること、そして傷病手当金および出産手当金に影響が生じることです。
保険料が下がるのはありがたい話に見えます。しかし、標準報酬月額は将来の年金額の計算にも、病気やけがで働けないときに受け取る傷病手当金、産休中に受け取る出産手当金の計算にも使われます。目先の負担は軽くなっても、あとから受け取る金額が減る。この構造を本人が理解しないまま手続きを進めると、後でトラブルになります。
制度上も、対象者に十分説明したうえで、あらかじめ書面で同意を得ておくことが必要とされています。口頭で「保険料が下がりますよ」と伝えるだけでは足りません。
会社としては、この特例を「従業員思いの選択肢」として持っておきつつ、説明の場面をきちんと設けることが欠かせません。特に療養中の従業員は、体調のこともあって説明を受け止めきれない場合があります。書面を渡して読む時間を取ってもらう、家族と相談する余地を残す。そこまで配慮しておくと、後から「聞いていない」と言われる事態を避けられます。
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療養、育児または介護と仕事を両立するために勤務日数を減らすなどの就労調整を行い、標準報酬月額が2等級以上低下した場合です。あわせて、報酬の減少が3カ月以上続くことが見込まれるとして、事業主から届出があることが必要です。
いいえ。将来の年金給付が減ること、傷病手当金および出産手当金に影響が生じることを十分に説明したうえで、あらかじめ書面で同意を得ておく必要があります。
必要です。特例措置による改定後も定時決定は行うため、被保険者標準報酬月額算定基礎届の提出は引き続き必要になります。
記事の監修者

酌井 敦史
しゃくい あつし
社会保険労務士/酌井社労士事務所 代表
全国社会保険労務士会連合会 登録番号 第23180049号
三重県社会保険労務士会 会員番号 第543号
1985年三重県伊勢市生まれ。2018年に社会保険労務士として開業。年間100社以上の労働相談に対応し、年間30件以上のセミナー講師を務める。給与計算・労働法務相談を中心に、三重県の中小企業を支援している。
本記事は2026年10月時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令・制度は改正されることがあります。具体的なご相談はお問い合わせフォームまでお気軽にご相談ください。