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個人事業者等の業務上災害報告制度とは|2027年1月開始・発注者側の義務を解説

個人事業者等の業務上災害報告制度とは|2027年1月開始・発注者側の義務を解説

一人親方など個人事業者に仕事を発注する会社に、新しい報告義務ができます。2027年1月開始の制度を、発注者の目線で整理します。

結論

(要点)

  • 令和9年1月1日(2027年1月1日)から、個人事業者の業務上の事故を労働基準監督署長へ報告する義務が始まる。

  • 報告するのは本人ではなく、仕事を直接発注した会社(特定注文者)や現場を管理する会社。個人事業者が死亡、または4日以上休業したときが対象。

  • 罰則はない。ただし報告した個人事業者に取引停止などの不利益な扱いをすることは禁止されている。

建設業などで、一人親方や個人で請け負う職人さんに仕事を出している会社は多いはずです。その個人事業者が仕事中にケガをしたときの扱いについて、発注する会社側に新しい報告義務ができます。制度の中身と、発注する側が何をすればいいのかを見ていきます。

いつから始まる制度なのか

労働安全衛生法などの改正にともない、令和9年1月1日(2027年1月1日)から、個人事業者の業務上災害について労働基準監督署長への報告を義務づける制度が始まります。「業務上災害」とは、仕事が原因で起きたケガや病気のことです。

この制度の具体的な運用をまとめた通達(役所内部の取り扱いを示す文書)が、令和8年(2026年)6月24日に出されました。開始まで時間はありますが、対象になりそうな会社は、今のうちに仕組みを知っておくと落ち着いて準備できます。

誰に、どんな報告義務が生じるのか

報告義務を負うのは、個人事業者本人ではありません。直接仕事を依頼した注文者(特定注文者)や、現場を管理している事業者(災害発生場所管理事業者)などです。この記事ではまとめて「報告主体」と呼びます。仕事を発注する側、現場を仕切る側が対象、と考えるとわかりやすいでしょう。

報告主体は、個人事業者が業務上の負傷や疾病により死亡、または4日以上休業したことを把握したとき、遅滞なく労働基準監督署長へ電子申請で報告しなければなりません。「遅滞なく」とは、正当な理由なく先延ばしにせず、すぐに、という意味です。

一方、個人事業者の側にも役割があります。業務上の災害で休業したときは、報告主体に対して所定の事項を遅滞なく報告することになっています。つまり「本人が発注元へ伝える」「発注元が労基署へ報告する」という二段構えです。

ここで大切な決まりがあります。報告をした個人事業者に対して、報告主体が取引停止などの不利益な取り扱いをすることは禁止されています。「事故を報告してきたから、次から仕事を回さない」といった対応はできません。

なお、この報告義務は、災害を防ぐ責任の有無とは直接関係しません。報告したからといって会社に責任があると認めたことにはならず、報告しなかったことへの罰則もありません。

「災害の発生を把握したとき」とはどの範囲か

報告義務は「災害の発生を把握したとき」に生じます。では、どこまでが「把握した」にあたるのか。通達では、次の場合が含まれると示されました。

  • 個人事業者から報告を受けた場合

  • 報告主体が災害の発生を自分で見て確認した場合

  • 被災者の救助や救急搬送があったことを把握した場合

ポイントは、本人からの報告がなくても義務が生じることです。たとえば現場で救急車を呼んだ、事故の場面を自分の目で見た、といったときは、本人が何も言ってこなくても報告主体が報告義務を負います。「本人から話がなかったから知らなかった」では通らない、と押さえておいてください。

発注する側が今からできる準備

制度の開始は2027年1月です。今すぐ何かの届け出が必要なわけではありません。ただ、いざ事故が起きてから電子申請の方法を調べ始めるのでは、遅滞なくという条件に間に合わない心配があります。

まずは、自社が特定注文者などの報告主体にあたるかを確認しておきましょう。一人親方や個人事業者に仕事を発注している、または現場を管理している会社は、対象になる可能性が高いといえます。あわせて、現場で事故が起きたとき誰が把握し、誰が報告するのかという社内の流れを、今のうちに決めておくと安心です。

▼参考

労働安全衛生規則及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(個人事業者等の業務上災害の報告に係る規定関係)(令和8年6月24日基発0624第5号)

https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001713372.pdf

よくある質問

・報告しなかった場合、罰則はありますか?

現時点で、この報告義務に罰則は定められていません。ただし義務であることに変わりはなく、報告する仕組みは整えておくことをおすすめします。

・個人事業者本人が報告してこなければ、会社は報告しなくてよいですか?

いいえ。本人からの報告がなくても、救急搬送を把握した、事故の場面を確認したなど、別の形で災害の発生を把握しているときは、報告主体が報告義務を負います。

・事故を報告してきた個人事業者との取引を、こちらの判断で見直してもよいですか?

報告をしたことを理由に、取引停止などの不利益な取り扱いをすることは禁止されています。報告を理由にした契約の打ち切りはできないとお考えください。

記事の監修者

酌井 敦史

しゃくい あつし

社会保険労務士/酌井社労士事務所 代表

全国社会保険労務士会連合会 登録番号 第23180049号
三重県社会保険労務士会 会員番号 第543号

1985年三重県伊勢市生まれ。2018年に社会保険労務士として開業。年間100社以上の労働相談に対応し、年間30件以上のセミナー講師を務める。給与計算・労働法務相談を中心に、三重県の中小企業を支援している。

本記事は2026年8月時点の情報をもとにした一般的な情報提供であり、個別の事案への適合性を保証するものではありません。法令・制度は改正されることがあります。具体的なご相談はお問い合わせフォームまでお気軽にご相談ください。